Monday 21 January 2019

『俺のケバブ屋はイスラムについてのポジティブなイメージの発信所だ』


元サイトはこちら。ラジオインタビューの書きおこし記事です。
"My Czech kebab shop is an embassy for a positive image of Islam"10-02-2015 13:27 | Dominik Jůn

 

 

『Amisん家(「だちの家」。店主のAmis Boussad氏の店という意味と引っ掛けで)』(Chez Amis)はアラブ/オリエンタルの食材を扱う食料品店でもあり、同時にケバブやファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)やフムス、クスクスなんかを売るスタンドでもある。

 

 

プラハ中央のスパーレナー通り(Spálená)にあるこの店はアルジェリア生まれのAmis Boussad氏が切り盛りしている。今回は彼の店で四方山話も含めて、チェコでのムスリムの生活について快くインタビューに答えてくれた。


Amis Boussad:もうこの場所に住みはじめて21年になるな。やってきたのは1994年の7月だ。ここで店を開き出したのが2003年の9月5日だな。

インタビュアー:ずっと同じ場所で?Chez Amisはずっとここにあったのかい?

Amis Boussad:ああ。この仕事でここに11年いる。チェコ自体には21年になるな。

インタビュアー:多分、貴方が初めてチェコに来た当時、その当時のチェコは閉じられた共産主義社会だったわけだから、アルジェリアからやってきてケバブを売っているなんていう人間は、もちろんチェコ人にとっては完全にストレンジャーだったんじゃないかなと思うんだけど。

Amis Boussad:おっしゃる通りでさ。この仕事を始めたとき、俺ははじめほんの少し悲観的だった。というのもチェコ人は俺の売るフード、あるいは俺の店、そして俺個人の人格について何も知らないわけだしな。だけど1年半か2年間かけて、俺は十分な顧客を見つけたし、彼らに俺たちの食事を売買を通じて教えてあげた。そしてケバブスタンドを切り盛りしながら、3年か4年後にはオリエンタルの食材を欲する客たちがやってこれるような店へとシフトしていったんだ。これは俺の顧客開拓と知識の伝授の結果だ。

インタビュアー:店内を見回すと、様々な種類のコメがあるし、お茶も種類が多いし、ナッツもでかい袋入りのものが多数あって、ひよこ豆に、ソースに、インドの食材もあれば...

Amis Boussad:エッグプラントペーストもあるぜ!

インタビュアー:21年もプラハにいるわけだけど、固定客層をちゃんとつかんだってことかい?

Amis Boussad:この店は、北アフリカそしてオリエンタルの食材のみならず、その精神性についても学び、理解してもらうための重要な役割を担ってると思うんだな。もちろん人々と出会い、語り、つるむことができる憩いの場ってことなんだがな。そう考えるならば、俺たちの仕事ってのは単に物を売るってことにとどまらず、喜びや娯楽を提供する空間の運営ってことでもあるはずなんだ。

インタビュアー:どうしてアルジェリアを離れ、チェコに来ようって決めたんだい?

Amis Boussad:正直な話、俺が今ここ、つまりチェコにいるってのは純粋に偶然、成り行きだね。だけれども偶然ってのはしばしばいい結果や方向性を示してくれるわけだ。本当は、カナダに勉強で戻る途中に立ち寄っただけなんだが、最終的にはチェコにとどまることを決めたんだ。

インタビュアー:旧/元共産圏だったヨーロッパ諸国というのは多民族、多文化、そして宗教的な多様性を備えた国だとは現時点においても言い切れないわけで...

Amis Boussad:もちろん、将来においては変わってくれることを願うね。

インタビュアー: 現時点では貴方は自分自身がアウトサイダーとか、あるいは好奇心を煽る存在、そういったものであると感じたりしてはいないかい?

Amis Boussad:個人的には、俺はプラハもチェコも大好きだ。時には俺はチェコ市民だとさえ感じたりもする。特に人種とか文化や宗教といった障壁を感じたこともなかったし、ここに居続けることに危機感を感じさせたやもしれない不幸や問題、それに類することを抱えてさえいないよ。

インタビュアー: おおむね、幅広く受け入れられてきたというわけだね。

Amis Boussad:間違いなく、そうだ。そう思ってもらっていいよ。ここにいれてうれしい。

インタビュアー: チェコでアルジェリア人であったり、あるいはムスリムであるがゆえの外人恐怖症に類するものを経験したことはあったかい?

Amis Boussad:皆無だな。多分だけど、お客さんとのやりとりにおける俺たちの態度、その丁寧さや真摯さが、チェコの人々とのいい関係を保つのに役立ってるんだと思う。そうしたものに出会ったことは一度たりともないよ。

インタビュアー: あるチェコの過激な泡沫政治家トミオ・オカムラが、つい最近、イスラム教徒は排斥対象にすべきであって、ケバブストアをその発端として追い出すべきだと主張してるらしいんだが、知ってるかい?

Amis Boussad:まじで言わせて欲しいんだけど、そういった人々が語ることにはそもそも耳を傾けたくもないね。もちろん思ってることをいう権利はあるわけだが、俺は彼らと同じ土俵に立つつもりはないな。だから沈黙させてもらうよ。単に彼が俺に向ける振る舞い、下品な振る舞いよりもましな振る舞いをしたいだけだ。なのでオカムラは好きなことを好きにいえばいい。だけれども、だからといってチェコのみんなが彼のいうことを聞くかどうかは別の問題だし、彼の言うことが正しいかどうかもまた別の問題だしな。もしある種の集団が反イスラム的な示威行為へと向かったとしても、彼らを咎めることは別にしないよ。別にやつらはやつらのしたいことをする権利があるしな。誰もがしたいことを自由にすることが許されていると俺は思う。だれどもチェコのみんなが彼らのような極端なイデオロギーに喜んで従うとは俺は思わないんだ。

インタビュアー:数百のチェコ人が文字通り反イスラム的なデモを実際に行っているのを見て、どう感じるんだい?

Amis Boussad:これはいっとかなきゃなんだけどさ、この前の土曜日に、9人か10人くらいの集団が店にやってきて、みんながケバブを一斉に注文したんだ。だから聞いたよ、『君等が一斉にケバブを注文するのはどうしてなんだ』と。そしたら彼らは『旧市街広場で「イスラムはいらない」と称する反イスラムデモが行われてるからだ』と答えた。だから彼らは反イスラムデモへの対抗行為を組織するために私の店にやってきたんだそうだ。私は本当に...いや、あれには驚いたよ。チェコとは全ての文化を受け入れる国なんだという考えを守るために、冬の寒い中、40キロ彼方からやってきたやつもいた。こういう行為って、とっても重要な振る舞いだろ。

そうした反イスラム的なデモをする人々というのは1000万とか1100万人中で4000から7000人だそうで。これはとても少ない割合だ。なので、別にこうした示威行為やデモによって反イスラム的なものを示せているとは俺は思わないんだ。付け加えれば、彼らのデモ行為によってここでの私たちの生活や仕事が影響を受けることはない。反イスラム的なことを考えている人と出会ったら、イスラム、つまりはムスリムとはどういう人であるかを彼らに見せてやる必要がある。そしてイスラムとは、彼らが思っているようなものとは全く異なるものであることを示してやらねばならない。彼らはイスラム=テロリストの宗教と考えている。だが、それは全くもって違う。反イスラム的な類いのデモを見るたびに、本当のイスラムとはどういうものであるのかをもっと本気で示していかねばならないのではないか、チェコの人々やお客さんともっとうまくやっていかねばならないのではないかと感じることがままあるよ。

インタビュアー:ということは、貴方はこの店をそうした考えの派出所、発信基地とある意味ではみなしているってことかい?つまり、様々な考えや印象をもっている人々がやってこれて、そしてイスラムについてポジティブな経験をもてるような場所として。

Amis Boussad:一つだけ言っておこう。これはイスラムの民にとってとてもいい宣伝効果をもたらしたんだ、実際には。だって彼らが「ケバブ食うのやめろ!」と言ってくれた結果、その反動としてケバブが売れまくったんだよ。

インタビュアー:フェイスブック上に幾つもの反イスラムグループ、あるいはそれに抵抗するグループができて、ケバブを食べるな/食べよう的なキャンペーンがはられて、勝手に動いてくれた結果として、チェコ人が個別にやってきて、ケバブを食べていってくれるという。

Amis Boussad:そうさ、「ケバブを食べるのをやめよう!」と彼らがいった結果として、ケバブ販売の量が増えてるんだ!彼らが「ムスリムのお店に行くのをやめよう!」と唱えれば、ムスリム系のお店の回転率があがりまくってるんだ。

インタビュアー:宣伝ってことになってるんだね...なんか本当にねじれた仕方ではあるんだけど...

Amis Boussad:オカムラは自分がなにをいっているか、ちゃんと考えるべきだと思うよ。そして自身のイスラムやムスリムについての見方をしっかり精査すべきじゃないかな。心配することはない、別に俺たちがここに来たからといって、チェコの人々が仕事を奪われたなんてことはないんだよ。俺たちはチェコ人がしたくはない仕事、やりたくない仕事を積極的に請け負ってやってるんだからな。それにここでケバブを俺たちが売っているという事実はとても素晴らしいことだと俺は思ってるんだ。10年、いや14年前、ケバブはもちろん、ファラフェルもフムスも売ることはできなかった。20年前なんて、そもそも餓えきっていた。だって日々、チーズと野菜しか食うものがなかったんだよ。

インタビュアー:というのも、そもそも材料含め、手に入れること自体がプラハにおいては当時は難しかったからだね。

Amis Boussad:そうさ、だけど今ではプラハは様々な文化でごった返している街だ。インド料理、ケバブ、あるいはアラブ料理を食べたいならば、なんでもござれだ。美しいじゃないか!プラハは今でこそ美しい。ロンドン、パリ、フランクフルト、ニューヨークへ行ってみなよ。どこでも、この種の美しさにあふれている。これこそが人生だ。何でも見つかり、そして手に入るんんだ。これこそが、まさにアメリカを強国にした一つの理由だと思わないか。

インタビュアー:多様性...

Amis Boussad:アングロサクソンたちの成功した事例に俺たち(ムスリム+チェコ人)ものっかるべきじゃないかな。神はそれぞれを互いに愛するべくつくったのであって、一緒に喧嘩せずに生きていけるはずなんだ。キリスト教、カトリック、ユダヤ教にムスリム。相互が喧嘩するために神は俺たちを作り出したわけじゃないと思うんだ。

インタビュアー:貴方の仲間のムスリムの経験をふまえても、貴方の仲間たちもプラハ、あるいはチェコに住んでいて幸せだと貴方同様に感じているといえそうかい?

Amis Boussad:嫌がらせとか挑発に類する被害は聞いたことがないな。安定して安心できる状況にいると思ってる。マスメディアの中でムスリムについて語られていることであったり、人々がムスリムについて語ってるってことだって俺たちは知ってるけれどもさ。だけど事実として個人的に、あるいは具体的に攻撃されたり、侮辱されたりって事件は一度もなかったよ。

インタビュアー:つまりは基本的にはチェコは寛容な社会だと貴方は思ってるってことだね?

Amis Boussad:ああ。個人的にいわせてもらえば、イスラム排撃に代表される過激で極端な考えってのは流行病みたいなものさ。

インタビュアー:そしてドイツのような国においてはムスリムコミュニティの中にある種の過激な少数派が確認されるという事実とは対照的に、チェコのムスリムの人々のうちには過激派や極端な主張をする人々はまったくいないとも言われてきたよね。もし分かる範囲でなにか意見があるならば、どうしてチェコにおいてはそういう極端な過激派がムスリムコミュニティから生まれてこないのか教えてもらえないかい?コミュニティに不満分子や不平といったものが堆積してないからなのか、それともチェコの若いムスリムはある種の(世界の現状や状態に対する)幻滅みたいな感覚にやられてないってことなのか。

Amis Boussad:俺に言わせるなら、過激派とか極端な主張をしたがる奴はどの国にだっているだろうよ。ムスリムな国においてさえ、いるんだからな。ゆえに過激派とか極端な主張をする人々の存在というのはムスリムだけの問題じゃない。もっと一般的な問題なんだ。俺の考えでは、人間はどうやって他者を理解すればいいかの方法を正に学ばねばならない時なんだよ。つまりはお互いが共存して生きていく方法ってやつをな。

インタビュアー:移民の仕事ってのはかなりの重労働で、長時間労働だってよく言われてるけど...

Amis Boussad:もちろんだよ!チェコ人が移民と同じくらいハードに働くと思うかい?答えはノーだ。今後だって絶対にそんなことは起こりえないだろうな。ゆえに彼らは俺たちのやってるような仕事をしようなんて思わないだろうよ。チェコ人がしたくないような類いの仕事を、彼らのために俺たちがやってるんだ。仕事があってうれしいよ。幸せだね。

インタビュアー:最後に回転するケバブの音でインタビューをしめさせてもらってもいいかな(回転ケバブの音が聞こえる)。これはまずは生で準備されてて、焼いて行くって理解でもいいかい?

Amis Boussad:ああ、自家製でつくってるんだ。

インタビュアー:チェコでも材料が手に入るからだよね。

Amis Boussad:そうだね。新鮮な生肉を買って全部調合してから、一晩漬けて寝かせるんだ。次の日に肉を全部このかたちに機械の中で積み重ねて、火であぶり回転させる。そうすれば...

インタビュアー:まだ生焼けだけど、回転し出してるわけだから、1、2時間くらいでできるって感じなのかな?

Amis Boussad:30分ちょっとくらいだね。

インタビュアー:それはすぐだね。とはいえ、今日はインタビューを受けてくれて、どうもありがとう。

Amis Boussad:こちらこそ。

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